2021/12/23

浴室で洗顔をしていると祖母から着信が入る。

f:id:shokochannel:20211225040318j:image

洗顔を終えて湯船に浸かりながら折り返す。

前日に母と電話越しに喧嘩をしていたのが気になっていたようで、母がいないときを見計らって電話をくれた。

 

祖父は離れて暮らすことを心配はしていたけれど、実家にいたときよりも私が生き生きとしていること、仕事を頑張っていることをずっと喜んでいるんだから、お前が無理しないでもできることをしてあげたらいいんだよ、と静かな、それでいて温かな声色で伝えられる。

 

私も「今すぐ行けるなら行きたい、でも私だって社会人だし、仕事を放って行けるわけじゃない、それだけが心配の形じゃない」と素直に話し始めると、いつもは一方的に話したいことをつらつらと話してくる祖母も、相槌を打ちながら聞いてくれた。

 

「1日でも早く帰るからさ、みんなでゆっくり美味しいものいっぱい食べようよ!あと私がおばあちゃんとお母さんのメイクもするし、全員でとびっきりのオシャレしてさ、私、カメラ一式持っていくから、家族写真撮ろう!」

 

私の提案にも「いいねえ、いいねえ」と笑ってくれた。

 

そして「もう遅くなるから早くお風呂に入りなさい」と電話を切る流れになるも「実はさ…」と切り出してくるので、何の気なしに「なぁに?」と返すと「おじいさん、あんたと電話を切ったあと、ずーっと“うちの子はほんとに綺麗になった”って、ほんとずーっと言ってんのよ」と想像していない角度からの暴露。

 

「いくら内孫って言ってもさ、もうあんたのこと自分の子どもみたいなことばっかり言うんだよ」と半ば呆れながら笑う祖母。この辺りからこっそり目の奥が熱くなり始める。

 

「時間のある時でいいからさ、LINE、入れてやりな、心配してくれる孫がいるってだけで、色々あったこともさ、きっと最後は良かったなって思えるからさ」

 

通話を切ってから、私はようやく泣いた。

湯船に浸かりながら、浴室に響く自分の嗚咽が耳障りだと思うも止められず、もう隣人から苦情が来ても構わないと思うくらいに声を上げて泣いた。許してくれ、私は今、とてつもなく悲しいんだ。

 

 

大人になって、大抵のことはなんでも、ひとりで出来るようになった、と思っていた。

 

でも私は、祖母に話を聞いてもらうまで、ひとりで泣くことも出来なかった。

 

父親のような、母親のような、そんな祖父に迫る死を、私はひとりで抱えようとして、出来なかった。それどころか手を触れることすら出来なかった。祖母と話すまで、抱えていたと思っていたのだが、実は距離をとりながら見つめていただけだと思い知った。祖母に手を引かれ、ようやく私はその事実の冷たさに触れることになった。

 

ひとしきり泣きじゃくったあと、私は日記をつけることにした。

 

このブログのタイトルは「あさぎゆめみし」

 

いろはうたの意味のまま、そして「浅き夢」よりも更に、浅葱色のように青い、そんな私の日記です。